「セッション(Whiplash)」という映画をご存知ですか?
19歳のジャズドラマーと音大の鬼教師との「狂気のやりとり」を描いた名作です。
長年ロックバンドをやっている筆者もジャンルは違えど音楽に関する映画ということで見に行ったのですが
- 音楽家ならではの苦悩や葛藤
- 演奏家しか味わえないであろうスリル・興奮
が、巧みに描かれていた作品だったのでジャズ業界には縁がない筆者でも十二分に楽しむことができました。
アカデミー賞を獲得している名作なので批評され尽くしている部分はありますが「ロックバンドのギタリスト」の視点でこの映画について語っていこうと思います。
ニーマン VS フレッチャー
世界的なジャズドラマーを目指して名門の音大に入学した主人公のニーマンとそれを待ち受ける鬼教官のフレッチャー
この2人による壮絶なコミュニケーションが物語の中心となっていくわけなんですが、音楽家であれば誰しもが理想として持っている
- 自分自身の高すぎる理想
- 完璧を求めてやまないマインド
がとても上手に描かれています。
一見大人しそうなマイルズ・テラーの演じるニーマンですが
- 名門大学のバンドに入ってジャズドラム業界でのし上がろう
- バンド内でレギュラーのポジションの奪ってやろう
という野心が見え見えですよね!ニーマンの内に秘めた貪欲な部分をとても上手に演じています。
実際、音楽でメシを食っていくなんてほんの一握り。
ロックもポップスもクラシックもジャズもジャンルは関係なく一般企業などでは考えられないくらい狭き門だと言えるでしょう。
そんな音楽業界に身を置いた人なら誰でも感じるであろう強烈なジレンマがとても上手に表現されています。
そしてニーマンだけではなく鬼教官のフレッチャーも同じく。
有名大学の講師という肩書き・音楽家としてのプライドを守り抜くためなのか、ニーマンの才能に対する嫉妬からなのか、パワハラまがいの指導や他の誰の意見にも耳を傾けないようなワンマンぶりなど
バンドマスターなら誰もが感じたことがあるであろう音楽に対する強烈なこだわりや、実は心の奥底に隠しているであろう弱くて繊細な部分も演じきっていたのではないかと感じました。
映画だから多少誇張されて描かれていると思われる方もいるかもしれませんが、音楽家のクレイジーな側面・音楽業界の異常さがとても上手に表現されてますよね。
セッションという映画の完成度を高めている要因の1つと言って良いでしょう。
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完成度の高い演奏シーン
ジャズドラマーが題材の映画なので「演奏シーンがどんなものなのかな?」と期待が半分・不安が半分ぐらいで映画を見た訳なんですが
ニーマンを演じたマイルズテラーがドラム経験者であったことに加えて、映画の撮影に向けてトレーニングしていたということで満足の出来だったと言えます。
筆者が注目してほしいのはニーマンの「目」
フレッチャーとの狂気のやり取りを繰り返していくうちにだんだんとドラムの世界・音楽の世界に入り込んでいくニーマン
「目」が最初と最後で全然違うんです
まるで悪魔に取り憑かれたようにその異常さを増していく様がとてもリアルに描写されています。
実際にプロで活躍しているミュージシャンも演奏していく中でその世界に入り込んでいきライブのクライマックスでは何かが取り憑いているかと思うくらいその内面が演奏に現れたりします。
そんな時に常識を超えたような素晴らしいプレイが飛び出したりするんです。
内面からにじみ出てくるような音楽のどろどろとした部分もしっかりと演じきっていたマイルズテラー、お芝居のことは詳しくありませんがニーマンというキャラが乗り移るぐらいの迫真の演技だったのかもしれません。
練習のしすぎで流血しているシーンがありましたが、よりいっそうリアリティーが出て筆者も冷や汗をかきながらとても楽しめたのを覚えています。
衝撃のラスト9分19秒
色んな人が語り尽くしている感のあるこの映画のラストシーンに関して、ネタバレも含みますが演奏する側の観点から語っていこうと思います。
晴れてカーネギーホールで演奏することとなったニーマンがフレッチャーの策略によって窮地に立たされる所から始まるラストですが…あらかじめ用意された譜面と違う曲を周りが演奏し始めるんですからその焦りと言ったら相当なものでしょうね
しかし窮地に追い込まれたニーマンの逆襲こそが「セッション」という邦題にもあるようにこの映画の見所だと思うんですよね。
筆者のようなロックやポップス畑のミュージシャンと比べるとジャズ系のミュージシャンはとても高い次元で演奏しているんです。実際ジャズバーへ行くと即興での演奏・セッションが繰広げられている場面に出くわすことがありますが、ジャズと言うジャンルには
高度な音楽の知識・即興演奏についていける技術や度胸が必要なんです。
大人っぽいサウンドが魅力なジャズですが、演奏する側にとってみればとてもスリリングなジャンルだと言えるでしょう。
そんなスリル満点のジャズセッションの要素満載のラストシーン。ニーマンのドラムソロから始まります。
「俺についてこい!」と言わんばかりの主張たっぷりのドラムプレイ、とても魅力的です。
実際のバンドでのセッションでもきっかけとなるプレイヤーがバンド・演奏のイニシアチブをとってその演奏自体が構築されていく訳ですがその様子が臨場感たっぷりに描かれていますよね!
フレッチャーがシンバルのスタンドを直すシーンもさらにリアリティを増す要因になってますよね。
まとめ
この作品はアカデミー賞を受賞した名作なのでどんな方が見ても楽しめることは間違いないと思います。
いろんな観点から楽しめるので、1度見た方もまた違った視点で見てみると新たな発見があったりするかもしれませんね
「闘争心」が足りなくなったらこの映画を見て、自分を奮い立たせてみてはいかがでしょうか?